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浦和地方裁判所 昭和25年(行モ)2号 決定 1950年11月29日

埼玉県南埼玉郡黒浜村大字黒浜三千五番地

申請人

野口光

同県同郡春日部町春日部税務署内

被申請人

春日部税務署長

日南良雄

右当事者間の昭和二十五年(行モ)第二号課税徴收執行停止決定申請事件について当裁判所は当事者の意見を聽いて次の通り決定する。

主文

本件申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は、「被申請人が昭和二十四年十二月二十三日申請人に対して為した昭和二十二年度所得税、加算税、追徴税の賦課決定に基く徴税処分の執行は、右賦課決定の取消を求める本案訴訟の判決確定に至るまで、これを停止する。」旨の決定を求め、その申請の理由として被申請人は昭和二十四年十二月二十三日申請人に対して昭和二十二年度及び昭和二十三年度所得金額を各五万千七百二十円、所得税額を各三千三百三十五円、加算税額を各千七十一円、追徴税額を各七百五十円と賦課決定し、同月二十八日これを申請人に通知した。しかし右賦課決定は確実な調査に基かず所得金額を過重に決定したものであつて違法である。申請人は昭和二十五年一月六日被申請人を経由し東京財務局長に対し審査を申立てたが、未だに審査の決定がないのみならず、被申請人は既に同年三月中昭和二十三年度分の所得税、加算税、追微税を徴收したのであつて、申請人は右賦課決定の取消を求める本案の訴訟を提起し目下審理中であるが、被申請人においてその判決確定を待たずに右賦課決定に基き残りの昭和二十二年度分についても徴税処分を執行し、申請人はそのため償うことのできない損害を蒙る虞がありその損害を避けるため緊急の必要があるから本件申請に及ぶ。と主張する。審按するに、仮りに被申請人が申請人に対して賦課決定した昭和二十二年度所得税額、加算税額、追徴税額が申請人主張の通りであつて、その額が過重であり、且つ被申請人が申請人主張の本案判決確定前にその徴税処分を執行してそのため申請人が損害を蒙るとしても、右損害は畢竟金銭を以て償うことのできるものであるのみならず、その損害金額も昭和二十二年度前記税額総計五千百五十六円中の正当額を超過する部分に相当する額に過ぎず、これを以て償うことのできない損害と認めることは到底できないのである。

よつて本件申請は、その理由がないから、これを却下すべく、申請費用の負担については民事訴訟法第八十九條、第九十五條を適用して、主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 大中俊夫 裁判官 岡岩雄 裁判官 立岡安正)

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